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2006/04/12

世界地図を広げると⑪

(百一)
おばさんの運転する車に連れて来られたのは、これから一週間お世話になる、North Lodgeというアコモデーション。
ま、寮みたいな所。
 
案内された二階の部屋には、ベッドが三つ、ベランダもあってそこにはイスと机がある、なかなかゴキゲンな部屋。
 
朝食なし、バス・トイレ・キッチン共同で、一泊約900円。
バックパッカーばっかり集まる宿だけあってさすがに安い。
天気も良く、カラッとしているので、洗濯物もすぐに乾いて気持ちいい。
立地もいいし、おまけに安いし、言うことなし。
 
もっとも、そんなにお金があったわけでもないので、というかこの頃は特に手持ちの現金が少なかった。
しかし、物価の安さにも救われ、キッチンもついていることから、スーパーで巨大な食パン(中でも一番小さいのなのだが)とバターを買い、毎日、というか毎食、その食パンとバターを工夫して食べる。
時折、牛乳とかチキンを買ってきて、変化をつけて、脳を誤魔化す。
 
 
さて、アコモデーションのおばさんに連れられてパース市内へ入ってくると、一言、とにかく美しい!
 
そこにある全てが、信じられないほどキレイで整っている。
 
街の中には自然や公園が多く、道沿いに広がる建物も、恐ろしくメルヘンチック。まるで映画の中に飛び込んだみたい。
あっちこっちと見て回るほどの観光名所は少ないが、街の中を歩いているだけで充分楽しめる。どことなく西部劇のような作りと雰囲気があるので、飽きることはほとんどない。
 
ま、住んでる人にしてみると、何にもないとこ、だそうだ。
 
 
日本から留学してきている学生たちをよく見かける。
しかも、せっかく留学してきてるのに日本人同士で固まって行動してる。
意味ないのでは?
 
 
街中にスプリンクラーが設置してあって、定期的にカシャンカシャンと回るその音は、居心地の良さを現しているかのようで、ボクのように、ただボケッとのんびりするようなやつにはもってこいの街だろう。
住むならここだな。
と惚れ込む。
 
それもそのはず。
「世界で一番美しい都市」と言われたこともあるんだって。
 
 
*実はパースという街は、世界的にも西欧の都市から最も離れている都市の一つとも言われている。それはどんな感じかというと、東京からブラジルに行くのよりも、ニューヨークからパースに行く方が遠いんだとか。しかも、オーストラリア国内においても他の主要都市からかなり離れていて、どっちかというと、隣国インドネシアの首都ジャカルタの方が近いくらい。
 
(百二)
一週間、暖かい土地でのんびりと過ごし、次なる地へと向かう。
行先は、同じオーストラリア国内のシドニー。
 
朝、6:25発、Qantas64便。Boarding Time5:25と早いので、前日の夜遅くに空港までやってきて、例のごとく空港内のベンチに泊まりこむ。
いざSydneyへ。
 
機内に乗り込み、6:45に動き出したジャンボ機。
機内食が出るが、朝っぱらから牛肉。
しかし、食パンだけで一週間を過ごした胃袋にとっては、たまらない御馳走。
それ以外にも、ただの国内の移動なのにやたらとサービスがいい。
まぁ、ナショナルフラッグキャリアだし、時差もあるし、と変な納得。
 
10:30にシドニー空港に無事到着。
時差があるので、実際は12:30着。
 
シドニーでも、パースのようなアコモデーションがあるといいなぁと思い、空港のインフォメーションでチラシをいくつかもらって一番安いところを探す。
幸い?街の中心部までエアポートバスが頻繁に出ているので大助かり。
 
とりあえず、もらったチラシの中で最も安いところを選び、バスの運転手さんに、この住所の近くのバス停が来たら教えてほしいと頼んで、運転席のすぐ後ろに座る。
 
すると、最寄りのバス停が近づいてきた時に、運転手さんが、
もう一度チラシの住所を見せろ、
と言うので見せたら、ゆっくり走って、宿の目の前で止めてくれる。
 
そして、ここだ、と。
 
オモシロい。
 
(百三)
やってきたのは、街の中心部まで歩いて15分程度という非常に立地の良い、The Kings Cross Backpackersというアコモデーション。
一本向こうの通りは、夜になると賑わいだす通り。
周辺にも似たような宿が二、三軒あって、バックパッカー達が多い。
しかし夜になると、些かその治安に問題が。
ま、泊まってるところがこんなだから狙われるなんてことはないんだけど。
もっとコワい所もあった、と独り言をいう。
 
朝食なし、バス・トイレ・キッチン共同で、A$11。約1100円。
案内された部屋は、二段ベッドが二つある四人部屋。
 
 
それから三日後、日本に帰国してた友人が合流。
折角だからツインの部屋に変えてもらう。
ツインと言っても二段ベッドが一つ。条件同じでA$26。割勘で一人約1300円、多少割高にはなったが、こちらの部屋の方が自分達のペースで生活できるのでわがままが言える。
 
充分安い。快適。
 
 
が、その夜のこと。
恐ろしい程の大群の蚊の訪問を受ける。
今までなかったわけではないが、ここまですごい歓迎ぶりは初めて。
翌日A$1で蚊取り線香を買ってきて対応。
さすがに安眠が取り戻せたが、部屋にその匂いが染みつき、外出から帰ってくるたびに言葉を失う。
 
マイッタ。
 
(百四)
さて、シドニーに着いてまず思ったことは、空気が汚い。
ま、パースがキレイすぎたってのもあるんだが。それと、そんなに暑くない。
 
街は、やっぱりパースとは比べ物にならないくらい大きく、交通の便もいい。しかし、歩いてほとんど市内を見て回れるから、大きいと言っても大きすぎるというほどではない。
 
さて、シドニーと言えばやっぱりあの有名なオペラハウスだ。
実際目の当たりにして、そこが本当にオペラハウスだと知った時にはかなり興奮した(劇場だとは思ってなかったので)
そこで一日潰れるほど。ちなみにバックステージツアーもやっている。
 
折角なので
DRAMA THEATERでシェイクスピアの「から騒ぎ」と
PLAY HOUSEで「ラブ・レターズ」というのを見てみた


シドニーという街は、フェリーもモノレールも運行されていて、実に上手いことあちこちを見て回れるようになっている。
観光自体が市とマッチしていて、色々と見て回っても適度に見ることができて、しかもそんなに疲れたりもしない。
街中には緑も多く、公園も多い。オーストラリアの首都だと思われても当然かもしれない。街並みもキレイだし。
(ちなみにオーストラリアの首都はキャンベラ。恥ずかしながらこれも知らなかった)
 
しかし、やっぱりそれに準じて人も多いし、車も多い。
そして、世界の大都市の例に漏れず物価もやや高め。
 
ま、それでも安い方なんだけどね。
 
百五)
翌日、せっかくオーストラリアにいるんだからゴールドコーストに行きたい、と友人が言い始めたので、ブリスベン経由でゴールドコーストのSURFERS PARADISEという所にやってきた。
 
すぐにバックパッカー用のアコモデーションを見つけ、宿を確保。
SURFERS CENTRALという宿。朝食なし、バス・トイレ・洗面台付きでA$14
一階と二階があって、ドアを開けるとすぐ外で駐車場になっている。
事務所がある建物は別にあって、そこにはプールやスカッシュのコート、ビリヤードやテレビ、キッチンも完備。
 
案内された部屋は、二段ベッドが二つある四人部屋で、後から他の客が来るかもしれない、と言われていたが、結局誰も来ることなく、ありがたく二人占め。宿自体がこぎれいな感じで、海もすぐ近くだし、非常に快適。
 
さて、この宿で同じ日本人のオサムさんという人と知り合った。
車でずーっとオーストラリアを回ってるんだとか。
 
ゴールドコーストには三日いたんだけど、結局ずっと一緒にいた。
 
一日目は、Movie Worldへ行きしっかり堪能、二日目、三日目は海に行く。
 
オーストラリアの夏ももうすぐ終わるというが、ここはまだまだ暖かい。
海に入る人も結構たくさんいるし、浜辺で日焼けを楽しんでいる人も多い。
そんな中で、久しぶりに海で遊ぶ。
荒い波にもまれたりしながら、なるほどこれなら沖に流されてしまう理由も納得できる、と足腰にしっかり力を入れて波をかぶる。
水は冷たいが、中に入ってしまえば逆に出るのが大変、寒くて。
 
日本人も多い。
ワーキングホリデーで来ている人もいるし、新婚旅行で来ている人もいる。様々。
 
日本語の需要が高いわけだ。
 
(百六)
しっかり堪能し、次なる地へ向かうため、オサムさんとはゴールドコーストで別れ、朝早くにブリスベンからシドニーに戻ってきた。
 
それから五時間ほどしてから再び機内に。
今度のはでかいぞ、何しろ、バンコクを経由してロンドンまで行くんだから。
ちょうど、ロンドンからシンガポールに来た時と同じ機体。
やっぱりサービスがいい。ジュース、ヘッドフォンが配布され、ほどなくドリンクサービス。
 
シドニー空港を17:00に飛び出し、18:30頃から機内食・ディナー。
途中映画を一本見て、軽食が一度出る。
 
夜中の2:00、現地時間で夜の11:00、無事にバンコク国際空港着。
到着ロビーを出ると、なんと友人が二人、プラカードを持って必死にこちらを探している様子が目に飛び込んでくる。
 
もちろん手紙で渡泰を知らせてはいたが、まさか空港まで来てくれるとは夢にも思わず、びっくりして駆け寄り、でも何て言ったらいいか判らなくて、ただただ感激しきり。
 
再会は約三年ぶり、当時大学生だったこの二人も、今や立派な社会人。
KetKeaw
社会人になったとはいえ、あんまり変わってなくて、逆にそれがすごく嬉しい。
 
(百七)
さて、いつまでも夜中の空港にいるわけにもいかないので、とりあえず近くのエアポートホテルへと向かう。
 
が、残念ながらいっぱい。
 
Ketが色々と探してはくれるが、地元の人とはいえ、さすがにこちらの方が旅慣れしていることもあって、危なくない推薦できる地区を教えてもらい、インフォメーションへ。
そこで手頃なホテルを選んでとりあえず予約。
 
空港からタクシーでそのホテルまで向かう。
 
実は、空港から市内までのタクシーが一番怖かったので、実際にタイ人と一緒ですごく助かった。
 
やってきてみると、思いの外立派なホテル。
朝食なし、バス・トイレ付で1100฿(バーツ)。割勘で一人約3000円。
 
日本円で考えるとすごく安く感じるが、実際、1000฿を超えるホテルは中級かそれ以上。
全ての基準は日本円ではない。
 
全ての国で言えることだが、「郷に入ったら郷に従え」。
 
(百八)
その夜、四人で遅くまでホテルの部屋で談笑し、翌日どちらかがホテルに迎えに来るので、その時にまた会おう、となった。
 
ほっと一息ついたところで、ちょっと小腹がすいた、何か食べに行こう、と、遅い時間にホテルを出る。
(大抵の場合、ホテル客を目当てにすぐ近くで屋台がたくさん出ている)
 
そこで肝心なのが、服装。というよりも、履物。
 
どんなにみすぼらしい格好をしていても、靴下&靴を履いてると、もう途端に吹っかけられてしまう。
逆に、裸足にサンダルとか草履だったら、絶対にタイ人もしくは現地のことをよく知る人だと思われるので、よほどのことがない限り絡まれることはない。
ということを、経験から知っていた。
 
 
さて、上手く馴染めたようで屋台での辛いタイ料理を満喫した翌日、Ketがロビーにやってくる。
 
あちらこちらへ案内してもらって、途中Keawも合流して、夜は、なぜかディスコへと連れて行かれる。
そして、「リビングで寝てもいいなら」とKeawとお兄さんが一緒に暮らすアパートへみんなで移動。
Ketが、次の日仕事があるから服を洗濯する、と、ボクらのシャツもついでに洗ってくれる。
パジャマまで用意してもらって、結局みんなパジャマ姿でリビングで遅くまで談笑。
 
なんでこんなに会話が止まらないのか。
 
こういう所は、たとえ社会人になったとはいえ、まだまだ、知り合った頃の学生の雰囲気のまま。
 
なぜか安堵する。
 
(百九)
三年近く前に一度、大学のカリキュラムの一環でタイに来たことがあった。
 
その時は、バンコクから飛行機と車を乗り継いで四時間以上離れたところにあるPattaniという小さな町にある大学で研修を行った。
KetKeawも、その時に知り合った友人たちの一人。
 
 
知ってはいたがやっぱりバンコクは空気が汚い。
が、この国独特の熱気や、タイ料理は自分の肌に合っている。
 
空港でKetに会った時は本当にびっくりした。
まさかバンコクにいるとは思わなかったし、ましてや出迎えに来てくれてるなんて夢にも思わなかった。
大学の研修が終わって三年近く経った今、まさかKetと一緒にいるなんて思わなかった。
 
タイという国が好きだと感じさせるのは、国風もあるだろうが、多くはその人柄にあると思う。
もし今回が初めての来泰だったら今のような感情を抱くことはなかったかもしれない。ましてやバンコクにいたんじゃ、ね。
 
タイを知りたければ、田舎に行った方がいい。
 
もし、Ketたち友人がいなかったら、またタイに来ようと思うかどうか。
生活するには大変困難なこの国、それでも好きなのは、やはり、友人がいるから。
だから、来てよかったとも思う。
 
いろんな国にいろんな友人がいれば、きっとそう思うことも多いだろう。
 
Ketに再会して、人を好きになる時の素直な気持ちや考え方を教わった気がする。
 
そんな気がする。
 
(百十)
タイ滞在四日間、ずっと二人が面倒を見てくれた。
 
タイに来てよかった。Ketが迎えに来てくれていなければ、きっとそうは思わなかっただろう。
だからまた思い夢見る、もう一度Ketに会えること、タイに来れることを。
 
 
夜中のバンコク国際空港は人でいっぱい。
かなり並んで無事にチェックイン。
いよいよQantas Airwaysに乗るのもこれで最後。
分厚かったチケットの束も、最後のページを切り取られると、随分と乗ったなぁと思う。
 
 
00:30、バンコク発QF1便。前回シドニーからバンコクに来た時と同じ便。
いよいよタイともお別れ。
28か月前と同じ気持ち、絶対また来る、と心に誓う。
 
 
機内食が二回出て、
タイ時間13:30、ロンドン時間7:30
無事Heathrowに到着。
今回はパスポートコントロールにも引っかからず、荷物をとって空港を離れる。
 
 
(続く)

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