車椅子から立ち上がったとたんにどよめきが起こって拍手が沸いた。
オペラ「リゴレット」のハイライトが終わった。
アキレス腱断絶という怪我のこともあり、関係者各位には本当にご迷惑とご心配をおかけしてしまった。
また共演者の方々にも、予期せぬ方向転換を余儀なくされて、本当に申し訳ないことをしてしまった。
「モンテローネの呪い」と副題されたハイライトでモンテローネ役をやることは、非常に有意義でもあったし光栄でもあった。
特殊な設定で、
本来は歌う所を歌わずに台詞で話を進める。
たまにそういう出演の依頼はあるが、どれも、やはり難しさは変わらないし、大変さも変わらない。
果たしてそれがいいのかどうかは、正直よく判らない。
しかも今回は怪我をして、初めて車椅子での出演で、というか怪我をしてから初めての本番で、本当にできるのかどうか、おかしくないのか、非常に心配だった。
降りようかと、思ったけど車椅子案が通って、本意なのか不本意なのかよく自分でも判らないまま舞台上にいた。
終演後に、多くのお客様が声をかけてくださり、
車椅子も得てして演出だと思った、という声を頂いたり、唯一日本語での登場だったので、とても判りやすく、また通る綺麗な声でとても素晴らしかったです、と手前味噌のようなこともいっぱい言ってくださった。
よかったのかな…
思うことはいっぱいあるけど、感じたこともいっぱいあったけど、それも、怪我の功名なのか、違う捉え方や違う視点で物事を見ることができたような気もする。
それは決して良し悪しではなく、
あくまで自分自身の中にある、基準で、その基準が、自分でも気付かないうちに偏りを見せ、また、その偏りは決してポリシーではなかった。
感情を創り産み出すこの仕事は、やっぱり自分自身が商品で、その商品価値を、どこに見出すのか、そして、なんなのか。
何が大事で、何が重要なのか、そして何が必要なのか、
それを決めるのは、自分だ。
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