池袋の芸術劇場小ホール1に出現したその舞台は、突起物がほとんどなく、舞台三方を幕で覆い、奥側にだけちょっとした台が組んである。
広いような狭いようなその空間の中で、
いざ明治時代の物語が始まると、舞台上にいて妙な感覚に囚われることがあった。
フッと、今自分はその時代を生きているのではないか。
お客様がタイムマシンに乗ってこの狭い世界に観光にやってきた、みたいなそんな印象を受けた。
「明治天獄」が幕を下ろした。
長かったような短かったような、とにかく無事に終わり、また多くのお客様にご来場頂いた。
そして関係者各位にはあらためて御礼申し上げたい、本当にありがとうございました。
思えば、花伝には半年以上関わっていたことになる。
2006年だけで、3公演。
そうかそんなに一緒にいたのか、と思うと、ちょっと感慨深いものを感じる。
客席から登場することと、客席に退場することが、多々あった。
個人的には実はそういうのは好きではない。
なぜかというと、自分が客で座っていたら舞台側に入り込めないからだ。
しかし、今回は違った。
舞台だけでなく、客席も含めて一つの空間として表現されていたから、登退場するにも、舞台の空気を持って、感じて、常に舞台上だという感覚があったからだ。
こういう舞台は好きだ。
創りあげるという感覚が強く、また、妥協はない。
それはきっと舞台に限らず、どんな仕事でも同じことなのかもしれない。
そうやって人は生きていくんだなぁ、と思わせる、まさに生きていくことの価値が、そこにはあるような気がしてる。
舞台の上に立って、役者として生きていて、いろんな人の助けがあって、今こうしていられる、その喜びと幸せを、素直に感じることができれば、
きっとその人の人生は豊かなものになるだろう。
それを、役者として舞台上から発信するためには、まずは自分自身が豊かでなければならない。
つまらない人間ではいけない。
それが、プロの役者の一つの仕事でもある。
大きな苦しみと、小さな喜び。
それは、今、この歳になって、今までの経験や出会いがあって初めて、感じることのできる、唯一の今の自分なのかもしれない。
好きな台詞を一つ、引用しておく。
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