目の前に現れたその空間は理想に近かった。
狭い舞台、間口五間強・奥行三間半の狭い舞台で
「こうもり」をやろうってんだからね…^^;
どうにもならない状況で知恵を絞って出てきたのが、
二画面舞台。
テレビとかでよくありそうな、あれ。
狭い舞台をさらに二分割。センターにレッドカーペットをだーっと敷いて指揮者まで。
そして一幕の設定を変えて、仕掛人ファルケの回想にしてみた。
なんというか、再現VTR?的な。
だから、本来なら絶対にいない登場人物が、すでに一幕から登場して、ビデオを見てる感じ。
照明も二画面で色味を変えてもらう。
そして蓋を開けてみたらそれがかなりイメージ通り。
さて、事ここに至るに、
前回の「こうもり」が終わった時には、もう「こうもり」の演出はやりたくないって思った。
理由はいろいろあるが、何より役者である自分が引っかかるのが、台詞だったのだ。
こんな言い方は何だが、台詞回しがとにかく下手くそすぎて、にっちもさっちも物語が回っていかない。
しかもその自覚がない。
その無神経さに腹が立って、もう二度と「こうもり」の演出なんかするか!!…と。
まぁしかしそうも言ってられないので^^;
ということで、
前回は、大舞台でしっかりやったのを、今回は、再演ではなく、小劇場版として再構築。
よって台本も書き直し。
時間短縮のため、よりシンプルに、よりスピーディになるようにしてみた。
もっとも、前回と同じキャスト・スタッフでやるわけではないので、基本的には変えなきゃおかしいし、違わないとおかしいわけで。
それにしても。
正直言うと、指揮者が違うだけでこんなにも変わるものか…と、実は感嘆した。
音楽稽古もそうだが、
とにかく今回指揮をお願いした高橋勇太氏の、「こうもり」の音楽についての造詣の深さゆえに、彼自身の表現したい音楽がすごくはっきりとしてて、とても面白く、また勉強になるのだ。
指揮者と演出家が、それぞれ異なるビジョンを持っているのは、そんなに珍しいことじゃないし、むしろ同じであることの方がおかしいのだが、(…いやどちらかというと、そのビジョンを持ってない指揮者と組むことが多いみたいで、それだとなんだか一緒に同じ舞台(作品)を創ってる気にならないんだよね…)、今回は、お互いにビジョンを持ってそれをぶつけ合い、そこから新しいものが生まれ、さらにそれを昇華させて創れたように思ってる。
楽しい舞台が創れた。と思う。
指揮者だけではなく、各人の尽力のお陰で、自分が思い描いたオリジナルの「こうもり」になったような気がする。
演じ手は大変だったろうけど…
だから。
関係者各位、
もちろんご来場いただいたお客様にも、
舞台スタッフにも、
キャストにも、
全員に、
心よりのありがとうが言いたい。
ただそれに尽きる。
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