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2013/07/29

踏み外した道っていったいどんな道なんだろう

オペラの現場でこれほどキャストが仲良くし密度の濃い座組は珍しいかも。


杉並区民オペラ「椿姫」が無事に幕を下ろした。
関係者各位には大変にお世話になりました。
特に今回は、小屋入りしてからってこんなにヒマでいいのか?! ってくらい全てが同じ方向を向いていた気がする。
そして、満席に近いご来場いただいたお客様にも心より御礼申し上げます。
今回は特に観て欲しかったから。


さて大きな演出テーマは「道」と決めていた。
原語では『La Traviata』。
日本語では『道を踏み外した女』(「椿姫」ではないんです)。
ここでいう『女』はもちろん主人公ヴィオレッタ・ヴァレリーなんだけど、じゃあ彼女が踏み外した道っていったいどんな道なんだろう、って思った。
周りはいろいろ言える。娼婦になったこと、とかね。
でも実際のところは彼女にしか判らないんじゃないのか、と。
そこで、実際にヴィオレッタを演じる二人とその相手役であるアルフレードの二人、計四人に、そのことを話し意見を交換し議論し、最終的に彼女の言う踏み外した道とはどんな道なのかを表現してもらうことにした。

そのためにも、舞台美術と合唱団の演出意味に拘った。

まず舞台美術は、基本的には同じ大道具を使い、それの組み合わせや配置を変えることで、同じものでも視点を変えると違って見える、つまり先入観で物を見るな、思い込むな、ということを表現してもらった。

そして合唱団には、時代という背景を演じてもらうことにした。
舞台美術はともかく、時代背景を演じるってしかもアマチュアの合唱団が^^;


よく、役の名前を考えましょう、なんて言うけどね、そんなの、ある線を越えてからの話ですよ。
その線を越える前からそんなことするからみんなとんでもない名前を考えてきちゃうわけ。
じゃあさ、現代の設定なのに、演じる青年の役名を「田吾作」とかってしますか?
戦国時代の話で若い娘役の名前を「のぞみ」とかにしますか?
しないでしょ?
まずは、物語となる背景を理解してもらうことが先でしょ。

てなことで、椿姫の背景となる1850年代のパリの話
というか当時の社会的背景とか歴史的背景とか庶民の暮らしとかね。
そんなお話をして、みんなにイメージを持ってもらい、さてでは皆さんはヴィオレッタの家の招かれたわけだけどあなたの来訪の主たる目的は何? と徹底的に問い詰めた。
結果、動く大道具ならぬ、動く時代背景・社会背景が出来上がった。
アマチュアのエネルギーってすごい!! そして何より純粋!^^!


そして肝心のソリスト群だが、実際に稽古を重ねて、結構地獄のように辛かったんではないかと思う。
というのは、これまでの椿姫の先入観を排除させられるところから始まったからというか基盤の練り直しというのかな
例えば歌詞を一言言うにしても、それは正確には誰にどんな気持ちで言ってるのか、そして本音はどうなのか、ってことはどんな表情じゃなきゃいけないのか、とか。
最初の頃は、それこそ
「さぁあまり考えずに言ってますね」(←そりゃそうだ^^;
だったんだけど、数回の稽古で、こりゃ相当めんどくさいぞ、とでも思ったのかな、演出家に突っ込まれる前にいろいろと考察を重ねてくるようになった。

結果、その人たちにしかできない役になった。
というのは、演じる役の感情の流れが、演じる人ベースで考えられたから。


そうは言っても、何の基準もなく役を作るのはさすがに無理。
その基準となるのが、時代であり社会であり、風紀である。
現代の日本を舞台にしたら、東日本大震災と原発は外せないだろうね、それが今の時代を生きる私たちの、切っても切れない社会問題なんだから。
1850年ごろのパリも同じ。
その時代にその社会で生きていた人々にとっての最優先事項は何であったのか、ということが、また演じる役によって違うということ。
ただし基準は時代と社会に準じる。
それが、歴史ものを演じるということで重要なファクターでもある。


果たしてそうして全ての関係者が同じ方向を向かされて出来上がったのが今回の「椿姫」と言っても過言ではない。
至るまでは大変だったけど、至ってしまえばあとは楽だった。
ちょっと言うだけで判ってもらえたから。




色んな所で、写真がUPされたり交流が深まったりしてるのをPCの画面越しで見てると、各々が相当苦労した分、相応の充足感を覚えてることが判る。
それらはきっと観に来た人にも伝わったことだろう。
そんな風にしてより多くの人の心が豊かになれば、きっとこの国も良くなるって打ち上げの挨拶で話したら「スケールでけぇな」と大爆笑された^^;ヨカッタ♪

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