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2006/03/22

世界地図を広げると⑨

(八十一)
それから三週間の後、再びロンドン・ヒースロー空港へと足を運ぶ。
いよいよ、アジア・オセアニア地区へと旅立つ。

これより少し前のこと。
友人と街を歩いてると、旅行代理店の広告に、
QANTAS AIRWAYS往復○○≪アジア三地区、オーストラリア二都市、込!≫」
と出ていた。
要するに、ロンドン~オーストラリア往復の航空券代金据え置きで、さらにアジアのどこか三カ国とオーストラリア国内どこか二都市に寄り道できちゃうよ、というもの。
日本円にして、約15万円くらい。
元々友人はこの時期に一度日本に帰国する予定だったので、どうせならこういう方がいいだろう、ということになった。

早速航空券を購入すると、ものすごい分厚い航空券の束を渡される。
そりゃそうだ、ロンドン~オーストラリア往復のチケットの他に、+五都市に行けるチケットまで一緒になってるんだから。

ということで、21:45フライトに間に合うようにヒースロー空港へと向かう。
今回は友人と一緒なので、一人よりは割安になるだろう、と心密かに期待。
他の友人たちに車で空港まで送ってもらい見送られつつゲートをくぐる。
パスポートコントロールのお姉さんはやっぱり愛想がないが、入国の時ほど厳しくはない。そりゃそうか。

22:01、テイクオフ。まずはシンガポールへ。
Qantas Airways 10便。席はビジネスクラスのすぐ後ろで、二階席へと上がる階段のすぐ脇。
席に付いてすぐにジュースが配られたり、ヘッドフォンが来たり、やたらとサービスがいい。さすがジャンボ機(なのか?)。
やはり、でっかい飛行機と長距離は一味違う。
機内食二回、ディナーと朝食。映画は三本。

現地時間18:10SINGAPORE CHANGI空港着。
パスポートコントロールでは、何も聞かれることなくすんなり入国。簡単すぎて逆に拍子抜けする。
評判通りキレイな空港の外に出ると、まだ明るい。そして、暑い。
東洋の国だけあって、黒髪の人が多い。
アジアに来たんだなぁ、と変な実感を抱く。

まるまる12時間かけて来た価値はある。

(八十二)
空港にあるインフォメーションで安宿を紹介してもらいやってきたのは、MAYFAIR CITY HOTEL。朝食なし税込でS$63(シンガポールドル)。割り勘で、一人約3000円。
熱気むんむんの外に比べて、この部屋はクーラーが入る。シャワーもあるし、思ってたよりもうんと広い。
中国人が経営しているせいか、ところどころに中国語が書かれた紙がある。
宿の受付の隣がナイトパブで、夜中になると音楽が聞こえてくる。そして、表通りから一本入ったところにあるのにもかかわらず、外の騒音がものすごい。

ここには、ヨーロッパにないアジアがある。

西洋ではなく、アジアに来た、と心底思う。やはり雰囲気が全然違う。そして、暑い!
しかし、アジアに来たと感じても、その中で日本を思うことはほとんどない。同じアジアで、それでも日本人は違う目で見られる。やっぱりそれは同じアジア人として結構悲しいものがある。同時に身の危険などの気配りをしてしまう自分もまた悲しいが。
街中は、いかにも金融都市のようで、高層ビルが軒並み連ねている傍ら、一本裏通りに入ると、貧民街を思わせるような店がずーっと続いている。
狭い国土によくこれだけの人がいるなぁとも思い、同時にビルの谷間に広がる緑の多さにも驚く。
さすがは南国だけあってジャングルのような雰囲気。この暑さも変に納得できる。

次は香港だ。

(八十三)
15:24、シンガポール・チャンギ空港発。一路香港へ。
三時間半くらいの空の旅。途中機内食・ディナーが一度。
シンガポールに来た時よりも一回り小さい機体の上、香港上空は天気が悪くグラグラとすごく揺れる。が、不思議と怖くはない。
世界一難しいと言われている香港空港、立ち並ぶビルを横目に見ながら、18:10、香港国際空港着。
ほっと一息。

外に出て、エアポートバスで市内に向かう。
安宿が多いと聞くビルの前で降ろしてもらうと、客引きのおやじたちがすごいことになっている。ほとんどがインド系のおやじ連中で、とにかくしつこい!
結局、そのおやじたちの中で一番しつこかったというか最後までついてきたおやじについて行ってみることにした。
その名も、NEW DELHI GUEST HOUSE

意気揚々とボクらを案内するそのおやじ。
非常に怪しげな建物に入っていき、階段を上っていく。途中、窓にガラスがなかったり、壁に焦げた跡があったり、かなり不安を抱く
このビルは重慶ビルと言って、安宿が多く入ってる建物でもある。
ということは知ってはいた。
さて、案内されたのはダブルの部屋。
いや、男二人でダブルベッドって。
しかも狭いくせにトイレ・シャワー・テレビ付。
これで一人HK$75。約1200円。

さすがにすごい部屋。
好んで外に出たがらないボクが、荷物だけ置いて、さっさと外に出ていく。なんせ、エアコンまでついていながら、部屋の中は蒸し蒸しで、ベッドも何となくジトッとしてる。
建物の奥の方の部屋なので、火事など起ころうものならひとたまりもないだろう。
さすがにこれは一泊が限度だ、と翌日は宿を変えよう、と決定。次の宿の目星をつけにそそくさと出かける。

食事は近くの、と言っても裏路地だが、屋台を体験。さすがに美味い!
が、HK$の表記がなくて、いわゆる人民元でなくてはならなかったため、仕方なくHK$払いするが、かえって高くついてしまった。

(八十四)
翌朝、すっきりしない最悪の目覚めで、宿を出発。
前日に目星をつけておいた新しい宿へとやってくる。
YMCA of HONGKONG。そう、あのYMCA

一、二年前に出来たばかりらしく、中はまだ工事中のところもあるが、素晴らしく立派。建物の中には、室内プールやスカッシュのコート、フィットネス、体育館まである。これで一人HK$340、約5500円。そこらへんがYMCAだなと思う。
しかし、部屋もまたものすごく立派で、ヨーロッパでも5500円クラスのこの部屋はまずないだろう、と思う。床はカーペット敷き、バス・トイレ付、もちろんテレビも電話もある。
前回の宿とは全然違う。
が、逆に言えばここは香港らしからぬ宿。安いのは魅力だが。

折角プールがあってスカッシュのコートがあるので利用しない手はない、と行ってみる。プールの使用料は一人HK$3、スカッシュはHK$20。安い。宿泊客以外の利用者も多く、西洋人も多い。
やっぱりここは香港らしからぬ所だ。

(八十五)
それにしても、まさか香港に来ようとは夢にも思わなかった。
いやもちろん、今回の旅は飛行機が主体なので、鉄道でヨーロッパを旅していた時のように本当に適当に行先は決められないので、航空券を買った時にはすでに香港に来ることは決まっていたわけだけど

さて、この香港という街がショッピング天国ということがよく判った。やっぱり日本に比べると安いし、それに何より物が多い。はっきり言って観光都市ではない。
(夜景はきれいなんだけどね。)
とは言え、こまめに歩き回れば、かなり自分なりの理解が深まる街とも言える。

驚いたのは、高いビルが表通りに沿って建てられているのだが、階下には派手で美しいショッピングモールやお店が並び、しかしふと上を見ると、その上階は想像を絶するようなボロさが目に入る。
通りに数えきれないほどの看板が出ていて、その影で上の方は見えにくくなってはいるが、よく見ると、ビルの中に洗濯物がたくさん干してあったり。
最初に泊まった重慶ビルのような際立ったボロいビルは少ないけれども、今はイギリス領でありながらも本来は中国であるということを感じずにはいられない。

シンガポールのように心から、アジアだ、と思うことはないが、逆に、ここは香港だ、と思うことがよくある。
いずれ中国に返還される。
その前にこの地に足を踏み入れることができたことは、少なからずとも価値あることだろう。
いずれまた来たい。

(八十六)
香港まで一緒に来た友人は、ここからいったん日本へと帰ることになっていたので、シドニーで合流するまでは、一人旅になる。
無駄に香港に居続けても面白くないし、かといってさっさとオーストラリアに渡ってしまうのは非常にもったいない、せっかくここまで来たんだし、と、香港の旅行会社で台北行の航空券を購入。HK$1800。約29000円くらい。ちょっと高い。

出発の日、13:15発、ということもあって昨夜夜更かしをして寝過ごしてしまい、あわててホテルをチェックアウト。
エアポートバスに乗り込むも、すごい渋滞。
何とか無事に空港に着いたものの、今度はチェックインカウンターがものすごく混んでて、ほとんどパニック状態。
それでも何とか搭乗券を貰ってパスポートコントロールへ。しかしここも激混み。
それらを何とかクリアしてギリギリに乗り込む。
そしてちょうど時間ピッタリにシートに座ると、そこにアナウンス。
「まだ全員乗ってないので」
結局25分遅れ。なんだとはいえ、飛行機ばかりはねぇ、混んでるから次にするか、なんてできないから。

アナウンスは、英語・タイ語・北京語の三つ。CAのお姉さんもタイ人。そう、台北まではタイ航空にお世話になる。久し振りだ。

数時間後、無事に台湾桃園国際空港着。
ここ台湾には、実は大学の先輩が高雄市に外務省の仕事で半年間来ているのを知っていたので、台北からすぐに高雄に向かい、そこで彼に電話して驚かそうと思っていた。

(八十七)
早速、台北市内に向かうエアポートバスに乗り込み、空港でもらった地図などを広げ場所を確認していると、左隣に座っていた女の人に、
「你是台湾人?
と声をかけられた。
びっくりして、いや日本人です、と英語で返事をすると、彼女は英語ができないらしく、ゆっくり確かめるように、多少知っている英単語を並べていろいろ質問してきた。
そのうちに、今度は右隣に座っていた女性が、英語でその会話に加わってきた。その人はどうやら英語が堪能らしく、
「あなたは中国人に見える。一人で来たの?
と、なんだか知らない間に三人での会話に。
「どこに行くの? 台北(たいぺい)?
「いや、友達がいるので、高雄(たかお)に行きたいんだ。どうやって行くのが一番いいかな?
どこだって?
「だから、高雄(たかお)
全く通じない。おかしいな、タイペイは通じるんだから、やっぱりタカオだろ、と思って、地図を広げて高雄を探し、ここ、と指差すと、二人揃って、
「あぁ、高雄Kao Shong!
?

(八十八)
エアポートバスが台北市内に着くころには、台湾人二人の中ですっかり話がまとまっていたようで、一人それについていけず、気が付いたたら、右隣に座っていた人と一緒にマックにいた。

「高雄に行きたいんだ」
と言うと、左隣に座っていた、ジェニーという18歳~20歳くらいの女性が、実は高雄出身で、ちょうど今夜実家に帰るから、お前も高雄に行くなら一緒に、ということになった(らしい)。

ちなみに右隣に座っていた女性の方は、24歳~25歳くらいの方で、すごくできるキャリアウーマン、みたいな、すっごく感じの良い人。
二人の女性は、実はすごく温度差があって、なんというか、ブルーカラーとホワイトカラー、みたいな、そんな印象。

さて、もちろん二人ともにそれぞれに事情や用事や仕事があるし、でもこいつ一人でほっぽとくのも心配なので、交代で面倒を見てやろう、となったらしく、互いに連絡を取り合うことになったらしい。
まずは、右隣に座っていた人。
台北市内に着いてバスを降りると、ジェニーはそのまま、それじゃあ、と言って二言三言北京語で交わした後、そそくさと去っていってしまった。事情が呑み込めず、あら? なんて顔をしていると、
「お腹すいてない? 最近できた流行のお店があるからそこでよければ」
と言うので、おぉ早速うまいメシが楽しめる。
と思ってついて行ったら、そこはマック。

なるほどね

(八十九)
この人は英語ができるので、いろいろと話を聞かせてもらい、なるほどそういう手順になったのか、納得納得っていうかスミマセンありがとうございますっこんな見ず知らずの外国人のために
などと、これまでの渡航歴や日本での話などをしていたら、早速に彼女のポケベルが鳴る。

ほどなくしてジェニーが登場。
よかった、これでなんとかうまいこと高雄まで行けそうだ、と思ってたら、ジェニーの父親が台北に出てきてるという。その上、今週一週間は台湾のホリデーとかでみんな休む、だとか。
えー、どうしよう
と、そういう風に事情がどんどん変わっていき、結局台北に残ることになった。

と、ここで右隣に座ってた人、仕事があるとかで、退場。

その後、しばらくマックでジェニーと、不思議な会話が続く。
ちなみに大学の授業で中国語を第二外国語として選択していた経験があり、話すことは困難でも文法的にはなんとなく理解はしていた、そしてそれと同等くらいだろう、ジェニーの英語も、その程度だった。
そこで始まったのが、片言の英語と中国語、さらにお互いにメモ用紙を広げペンを持ち、漢字による会話、そして人間の基本ともいえるボディランゲージ。

これが今後二人の会話の基本になっていく。

さて、それじゃお腹もすいたことだし夜食も兼ねて、と、美食で有名な士林区に連れて行ってくれる。
士林というのは、いわゆる屋台街みたいなところで、本当に何でもあるし(時々Sushiとかあったりする)、安いし、何より美味しい。そして、さすがにこれは自分一人では来られなかったな、と強く思う。
ちょっと困ったことが、ジェニーが奢る奢ると言ってきかないこと。彼女曰く、お前はこの国に来たお客様なんだからもてなすのが当たり前だ、と。そして、美味しいか? それならよかった!! と。

そんなこんなで、ぼちぼちいい時間にもなってきたので、市内に戻って安宿を探したいからどこか教えてほしい、と頼むと、しばらく思案した挙句、私の部屋に泊まれ、そのかわりワルイことしようとしたら放り出すから、と言う。
いやさすがにそれは申し訳ないし、そんなわけにはいかないでしょ、と強く拒むが、実は今どこにいてどうやったら市内に戻れるかも全く判らず、結局彼女の好意に甘えることになる。
行ってみると、詳しくは判らないんだけど、雰囲気からして、なんとなく社員寮、みたいな、そんな感じ。部屋自体はすごく狭く、たぶん四畳半くらいかな、しかも男子禁制だとか。

おいおい大丈夫か、あとで怒られなきゃいいけど

(九十)
寝袋も持参していたので、ボクは床でいい寝袋あるし、と自ら寝袋にくるまりワルイことしない意思表示をしっかり示すが、それ以前にとにかく会話が止まらない。
好きな音楽や、物語や、日本でのことや、将来の夢とか、いろんなこと。

これが一泊目。

翌日、さすがにここに二泊はできないし、もちろんそのつもりもなかったので、安宿を探すよ、と言ったら、お金がもったいない、男友達に頼んでみるからちょっと待て、と。そして、何人かに連絡をしてくれる。
そして連れて行かれたのが、林(リン)さんという人の家、というかマンション。ここに林さんとその妹が一緒に住んでいる。とにかくすごい家で、間違いなくものすごい大金持ち。部屋数も把握できなかったし、何よりマンションのはずなのに室内に階段がある。
この林さんという人は、ジェニーとはかなり昔からの付き合いがある友達らしくて、彼女曰く、
「ハートはいいが、口が悪い」
と。
ここで、林さんの他に、その妹さんとその彼氏、それと共通の旧友らしき男の人、計四人と新たに知り合う。

正直言うと、何が何だかよく判らないうちにこんな状態になっていた。
ジェニーに、
「お前は汚い、だから風呂に入れ」
と言われてお風呂まで世話してくれて、っていうかジェニーん家じゃないのにいいのかね、なんて会話は一切通用せず、でもおかげで久しぶりにすっきりゆっくり。

その後、茶室らしき部屋でなんていうんだろう、以下な感じのことが。

1.急須や湯呑などをあらかじめお湯を入れて温めておく
2.急須に入っているお湯を捨て、茶葉を入れる
3.急須にお湯をちょっと溢れるくらい注いで蓋をする
4.急須に上からお湯をかけて蒸らす
5.湯呑などのお湯を捨てて、茶を注ぐ
6.香りを楽しむ&飲む

茶室だと思ったのには理由があって、
まず、大きな机をみんなで取り囲むんだけど、その机が大木の年輪みたいなもので(多分天然物じゃないかな)、真ん中に向かって下がっていってるの。
その底にあたるちょうど真ん中あたりに急須や湯呑が置いてある。
そこに直接お湯をかけたりして、そのまま排水できる仕組みになっている机なのだ。
そして、部屋の中には無数の茶壺や茶器が陳列されている。

これ、お茶を楽しむためだけの部屋だよね。

とまぁ、こんな感じのもてなしを受けつつ、目の前で本物の流儀を見ながらみんなでずっとおしゃべり。
といっても、皆、ジェニー以下に英語ができないため、身振り手振りでの会話。それでもなんとなく通じるところが不思議。為せば成る。
とは言え、ほとんどジェニーに解説してもらってた。

こんな調子で夜遅くまで呑んで食っておしゃべりして、好意に甘えて、結局ジェニーもその日は林さん宅に泊まっていき、翌日はその三人で行動することになる。
 

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